此処は青春台駅前。そこには一人の少年の姿。

「ぁあ…おチビ遅いにゃぁ…9時に待ち合わせしたのにぃ……」



観覧車



一人ごちって居るのは菊丸英二。
おチビ事越前リョーマは遅刻の常習犯である。
遠くから走って来るリョーマの姿を発見すると英二は一瞬表情を明るくさせたが即座にツーンとした表情を作る。

「エージ先輩‥遅れたっす…」
「…おチビのバカ。今日と言う今日は許さないんだから…」

今日で何回目なのか解ってるの?とでも言いた気に言葉を発す。
分が悪い表情をし、反省の色を見せる。

「にゃんてね☆冗談だよ?でも、この埋め合わせはちゃんとしてよね?」
「わかってるっすよ。言われなくてもちゃんとしますって。」
「んじゃ行こッ!遊園地♪」

ホント可愛い先輩。などとリョーマが思っていることなど知らず一人はしゃぐ英二。



「先ず、何に乗りたいっすか?先輩」

レディーファーストならずエージファーストである。(笑

「んっとねぇ・・・あれっ!」
「あれって・・・あれっすか?」

『あれ』とは言わば遊園地最大の人気者、ジェットコースターである。



「大丈夫っすか?エージ先輩…」

「ぅん…なんとか大丈夫だよ?にしても何でおチビってば平気にゃんだよっ!」

英二は即ダウンしてしまったのだ。
リョーマがジュースを買ってきて英二に渡す。
勿論自分の分もだが。

「知らないっすよ…。そんなの。エージ先輩が唯弱いだけじゃないっすか?」

暫く沈黙が続いた。不図リョーマを見ると何やら物欲しそうな顔でこちらをみている。

「何…?おチビ?」
「エージ先輩…そっちのも飲みたいんすけど。」

何だそんな事か、と英二はリョーマに飲み物を渡す。そして、その後思った。

「(…間接キスじゃん!)」

時既に遅し。次の瞬間にはもうリョーマの口唇に触れていた。
リョーマの事だから計った事は明らかだ。
一人顔を赤くする英二を見るなり

「エージ先輩どうしたんすか?顔、赤いっすよ?」

ニヤッと笑みを浮かべている。

「別に何でもないよ?唯‥ちょっと…ね。」
「ちょっと?」

リョーマが英二で遊んでいる事は一目瞭然である。

「もー!!!だからっ、……おチビと、間接キス…。」
「別にこんくらい普通っすよ?アメリカだったら‥」
「言わなくていいッ!!それに、ね。今のが普通なのはわかるけどさ…。不二とかとしょっちゅうしてるしッ。」

聞き捨てならぬ言葉を発した瞬間英二は口を塞いだ。

「ふーん…そぅ。」

不機嫌そうなリョーマの声が英二の耳に届く。
と、焦っていたのだが、リョーマはリョーマで違う意味で焦っていた。

「(あの、青学一要注意人物としょっちゅう間接キスをしてるって…しかもあの人もエージ先輩狙ってるって言うのに…)」

そう。英二と不二の関係について焦っているのだ。
英二は親友と思っているのはよくわかっているが、相手はそうでもない事を知っている。 その時…『ぐ〜…ぎゅるぅ…』

「………………」
「………//////」
「…エージ先輩、お腹空いたんすか?」
「////へへ‥ちょっと、ね。」

そう。思い切りお腹が鳴ったのだ。ありえない程大きい音で。

「ぇっと…ぇ〜っと…おチビお腹空かにゃい?」
「まぁ、エージ先輩程じゃないけど空いてますよ?」
「煩いッ!!っと、まぁそれは置いておいて。俺、今日お弁当作って来たんだ♪食べて、くれるよね?」

上目遣いでリョーマをジッと見る。しかも『食べて…食べて…』と目で訴えている。
断れない…。最初から断るつもりなどは皆無なのだが。

「食べるに決まってるじゃん。俺、朝から何も食ってないんすから。」
「そ、なの??」

首を傾げて問い掛ける。その姿を内心可愛いと思いつつ一回頷く。

「俺、朝寝坊して、エージ先輩待たせてるから…食わずに出てきたんっすよ。」
「……ダメジャンッ!!ちゃんと食べなきゃ!俺はちゃんとおチビが遅れても待ってるんだから。」
「そんな事、出来ませんよ。俺が嫌だし。」

ならばいつも遅れてくるな。と突込みどころ満載だが其処は今置いておこう。
そして、英二が作ってきた弁当を開く。

「………英二先輩…」

弁当を見つめて呼びかける。それにキョトンと首を傾げる

「此れ、一体何時に起きて作ったんすか?」
「んぇ?5時だけど?」

5時と言えばリョーマはまだ夢の中である。

「それよりっ、早く食べて食べてvv」
「…ん。いただきます。」
「ドーゾ♪」

期待な眼差しを向ける英二を前にパクリと一口食べる。

「美味しいっすよ…エージ先輩も食べなよ。俺だけ食べてるもの嫌なんだけど」
「ぁ、うん!いただきま〜す♪…うん!今日はいつもより美味しいv」
「それは、俺と食ってるからじゃないっすか?」

ニヤリと笑みを浮かべて言ってみるが素直にも笑顔を浮かべて『うん!』と返した。



そして日が暮れてきて・・・

「エージ先輩、最後にあれ乗りません?」
「あれって…観覧車?うん!いいよ!」

そうと決まれば話は早い。英二はリョーマの手を取って突っ走った。

「おチビ〜見て見てッ!!綺麗だねぇ〜♪」
「そうっすね。」

元から素っ気無いリョーマが更に素っ気無くなっているのは気のせいか?

「おチビ…どったの?さっきから妙に静かだけど?」
「…エージ先輩、知ってます?この間乱射の丁度天辺でキスするとその2人は結ばれるって言うの。」
突然何を言い出すのかと思えばそんな事かとホッと肩を撫で下ろした。

「そんなのあんの?俺知らなかった〜。おチビは何でそんな事知ってるの?」

無邪気な質問にリョーマは一瞬恥ずかしそうに顔を顰めた。

「どーだっていいじゃないっすか」

それで、とリョーマは続けた。英二はキョトンと首を傾げる。

「俺、エージ先輩と結ばれたいんすけど?」

嫌っすか?と英二に迫る。
顔を赤くした英二がリョーマに微笑みかけて

「…いいよ。俺おチビと結ばれたいもん!………………もう直ぐ…頂上だよね…?」

外を見て呟く。
沈黙が続く中、頂上までカウントダウンに入ろうとした時リョーマが口を開く。

「エージ先輩…目、閉じてくれます?」
「ぅん…」

二人が付き合って二ヶ月も経ったと云うのに
キス一つしていないと聞いた不二が気を利かせてこのことをリョーマに教えたのだ。
……3……2……1…
二人の口唇が重なった。
離れてからの第一声は英二の声だった。

「おチビ…好きだよ。とっても…!」
「俺も、エージ先輩の事好きっすよ。」





++++++FIN+++++++





言い訳という名の後書

懐かしくもある初のリョ菊小説。
初々しい…vv
自分で書いておいてあれですが、これは好きです☆