映画が終わったらしく、映画館からは人が大量に出てきた。
その中には菊丸と忍足もいた。
この二人、今日は付き合い始めて3ヶ月が経ったので二人だけで出掛けようと映画館に足を運んだ。



二人だけの時間



「だぁ!忍足ッ腹減った!」
「何やねん英二…もうちょいムードに浸るとか出来へんの?」
「だってぇ…」

見たのは勿論…ラブロマンス系の菊丸はあまり興味のなさそうな映画。
だが、先程までは涙を流したりしていた。
けれど、菊丸としてはムードに浸るよりこの空腹を如何にかしたいのだ。

「はぃはぃ、何か食い行こな」
「ゴメン…。」
「謝る必要なんてあらへんて。腹が減っては何とかって言うしな。俺も丁度腹減って来た所やし」
「…うん!」



熟菊丸に甘い自分が居て、以前は正直驚いた。
前なら自分が誰かに尽くす、甘やかす、…などしたいともしようとも思わなかった。
が、今はどうだ?菊丸の為なら例え火の中水の中、と言う状態である。
其処まで惚れ込んだ初めての相手が男だという事に如何とも思わない。
菊丸を評価するとしたら、そこらに居る女より数段可愛い。
忍足に言い寄ってくる女の方々だって少なくない。
寧ろ多い。
それでも忍足は菊丸を選んでいるのだ。
正直、そっちの方が敵が多いと言えよう。
親友と云うポジションをちゃっかりゲットしている不二周助に始まり、
頼りになる後輩、桃城武
英二のお気に入りの生意気な一年レギュラー越前リョーマ
それから、あのお堅い部長さんも。
つーか…青学のレギュラー陣全員。
それに加えて氷帝の部長やら…山吹のラッキー何とか云うのとか…兎に角多い。



「おしたりー?」
「ん?どないしたん英二?」
「それはこっちの台詞ー!ボーとしちゃってさ。大丈夫?」

反則やろ…、忍足は思った。
上目遣いで覗き込む。しかも…至近距離で。

「大丈夫やて。あんま心配せぇへんでも、ちょっと考え事しとっただけやし。」
「そなの?」

と再びケーキに夢中になる。

「エージ?顔にクリーム付いとるで?」
「ぇっ!嘘!?何処何処?」

此処、と忍足は自分の顔で場所を示すが中々其処に行かない。
見かねた忍足はクリームの付いた所を舌で舐めたのだ。

「ご馳走さん♪」
「ぉ…忍足〜!!口で言ってよねッ!!!」
「ちゃんと言うたけど英二が中々其処を取ろうとせぇへんからしゃぁないやん?」

上機嫌らしく微笑みながら言う。

「別にいいけどさ…。でも、恥ずかしいじゃん」

こんなに沢山人が居るのに…とでも云いた気に呟く。

「恥ずかしかったん?」
「ぅん。」
「なら二人ならえぇの?
「ぅん…ってえぇ!!?」

突拍子のない質問なのだが、勢いと云うもので思わず「うん」と返してしまったのだ。

「ほんま可愛えぇなぁ英二は。」
「ばっ…ぅう…まぁ…二人の時なら構わないかもしんにゃいけど…。」
「なら今夜お持ち帰りしてえぇ?」
「ぅ……今夜だけなら…そのかわり、優しくしてよね?」

口前に人差し指を立てて微笑みながら一言。
忍足は苦笑しつつも喜んだ

「勿論やて。にしても、今日は自棄に素直やな?」
「そう?だって俺忍足の事好きだしー。ってか、別にいいよ?俺帰る準備は万端だから嫌ってんなら即帰るからv」

悪戯に笑いながら言う。

「嫌なわけないやろ?好きやなんて嬉しい事言ってくれるやないの。俺も、英二の事、…愛してるで?」

最後の一言は英二の耳を寄せて呟いた。
その言動に思わず赤面したのは言うまでもない事で。

「だからっ!忍足〜…そういう事をサラリと言うなよなー…言われたこっちが照れるッ」

こう言葉にしながらも内心、やっぱり女の子ってこう云う事を忍足に言われたりされたりしたら直ぐ落ちるんだろなぁ…自分もなんだけど。
と一人忍足に見惚れたりもしていた。

「ほんまの事サラリと言わんでどないすんの?」

ニヤリと笑みを浮かべて言う姿に赤面し、憎まれ口を叩きながら結局今夜はお持ち帰りになったと言うのは又別の話…。



+++++FIN+++++





後書と言う名の言い訳

懐かしき遺品…ではなく、懐かしき作品で御座います。
読み直すのは嫌なので全く読み直しておりません。【笑
直すのも面倒でやりたくなかったのですが、まぁ色々と修正部分が御座いましたので修正致しました。
やはりその辺はきちんとしておきたいので…あまりアップできない分【苦笑
でも今書いてても忍菊はいいですねvv


2004/12/30/修正