あまやどり 7月…。この時期は突然部活もなくなりやすい時期である。 大概、一時間ほど遅らせやるのだが。グランドコンディションなどを見てからの事である 別に朝は晴れていても夕方突然雨が降ってくる時だって多々ある。 つまりは、夕立である。 「ぅわぁッ!!もーッ…にゃんで今日傘持ってないんだよーッ」 突然降って来た雨の中走る一人の少年。 少年とは言わずとも菊丸英二である。 彼は、今日自分も調達したい物があるからと買出しに出たのはいいのだが、夕立が降るなど英二の頭の中にはなかった。 「…はぁ……にゃんで今降るんだろ…」 どうにか店は閉まっているものの、雨に濡れずにいれそうなところへと駆け込む。 腑と向こうを見れば服を払って水滴を落としている少年を見つけた。 何処かで見たことあるような… 「参ったわぁ…何で雨降るんやろ…今日ホンマついとらんわ…」 大阪弁が耳に入り思わずジッと凝視してしまった。 そいつと何処かで会っている気がしたから。 向こうに居る少年がコチラの方を向いたとき「やはり何処かで会った事がある人」だと確信はした。 でも、何処で会って、結局誰なのかは思い出せなかった。 「………お前、青学か?」 「ほぇ?ぁ…うん。」 少し悩んだように顎に手を当てて次こっちを見たと思えば走ってこっちに来た。 「ぇっ?ぁ…」 「お前…、確か菊丸やな?」 何で知ってるの!?と目を見開き相手を見た。 「そらな…ダブルスで有名やろ?ちらほら耳にしとるんや。で、自分は知らんの?有名なんやけどな?」 今の台詞からテニス関係で見たことが有ることだけは確かだ。が、全くと言っていい程にわからない。 「ぇえっと…」 「わからんのならえぇわ……俺は忍足侑士。氷帝学園の3年や」 此処まで言うとやっと思い出したらしくパンッと手を叩いた。 「次、対戦する所だッ!!」 そう、乾に見せられたデータの人だ。 「せや。こないな所で会うなんや奇遇やな。」 「買出ししてたら雨降ってきたから…。今誰かに来てもらおうかなって」 と、既に手に持っていた携帯を忍足に見せる。 「別にえぇんとちゃう?迎えに来てもらわんでも。どーせ夕立やし直ぐ止むやろ」 忍足の言葉で空を見て納得し、携帯を鞄にしまう。 確かにまだ掛かるであろうが、止みそうな雰囲気はある。 と言うよりも断定に近く止む。 此処からは少し離れているが徐々に雲が薄れている。 「そうだね。なら止むの待つよ〜。」 と、それだけの会話で何故か沈黙になってしまった。 理由は、忍足は特に話題を提供するような奴ではない。 どちらかと言えば、出された話題に乗る奴、なのだ。 又、英二は話題提供者。だが、今英二は話題提供よりも隣に居る人物に見惚れていた。 雨が滴っている所為で、何割増か色っぽく見える。 その視線に気がついたのか腑と忍足も英二に眼を遣る。 「どないしたん?」 声をかけられて正気に戻り今自分が考えていた事に赤面する。 そんな英二を見て軽く笑みを零すと耳元で囁かれた。 「そんな顔しとったら、襲うで?」 この言葉に更に赤面して怒鳴る。 英二は、襲うなどと言われてそれらの行動を表に出さないような人間ではない。 それを解っての忍足の言動なのだ。 ある種、忍足は英二の行動パターンが読みやすいと見受けられる。 唯稀に、そんな忍足でも英二の言動を読み取れない事だってある。 「でも…いいよ?遊びじゃにゃいんだったら、ね?俺が本気で忍足の事好きになったら。」 この英二の言葉は予測できなかった。否誰も予想などしないだろう。 腑と外に目を遣った英二。 「ほら、雨も止んだよ?……帰らないの?」 唖然と立ち尽くしている忍足に声を掛ける。それにやっと忍足も外を見る。 「ホンマや……ぁっ、虹、出とるやん。」 忍足の言葉に反応し必死になって虹を探す。見つかったとき思わず感動した。 虹なんて滅多にお目に掛かれるものではない。 小さいものならばホースなどでもしょっちゅう見れるが。大きい虹など此処数年ぶりではないだろうか? 「菊丸…俺はこの虹に誓うで…。絶対、自分を俺のもんにしたる。」 覚悟しとき、と真剣に言う。英二も勿論「頑張ってね。」等と他人事のように言うが、既に惚れ始めてる事は口になどしない。 でもいつか、忍足が本気に告白してきたときはきっと首を縦に振るであろうと 「…なら忍足、俺の連絡先くらい教えておこうか?」 後書き 何でしょう此れは… 結構時間をかけて真剣に書いたのですが、先ず原作と季節ずれてるんですよね。 原作では、多分6月あたりに氷帝戦なんですが、これではどうしても設定上7月じゃないといけなかったんですね(溜息 終わり方も変ですね。とりあえず後日談では二人付き合ってますよ。 ですが其処まで書くつもりは毛頭ありませんので、ご想像にお任せいたしますv 2004/6/19 2005/1/7/訂正 |